リスク計測テクノロジーズ株式会社(以下、RimTech)は、2020年8月から12月末にかけて、LIP. 横浜(※1)を通じて、「声だけ5秒でモチベーションを可視化するMotivel」を使用した実証実験を行いました。当実証実験にご参加頂きました皆様には、心より御礼を申し上げます。今次の実証実験では、Motivelが算出するモチベーション指標と、活動意欲、集中力・注意力、ヒヤリハットとの関係性を調べました。

※1 「LIP.横浜」は、横浜ライフイノベーションプラットフォームを意味します。横浜から、健康・医療分野のイノベーションを持続的に創出していくことを目的とし、産学官金が連携して取り組むためのプラットフォームです。

https://www.city.yokohama.lg.jp/business/keizai/lifescience/lip/lifepf.html

問い合わせ先
リスク計測テクノロジーズ株式会社
https://rimtech.co.jp/
info@rimtech.co.jp

概要

社会・企業が直面するリスクを大別すると、定量化(見える化)が容易なリスクと難しいリスクに分類されます。見える化が容易なリスクには、有価証券等の運用における市場リスク、与信管理の信用リスクが該当します。他方、人に関するリスク(オペレーショナル・リスクという)は、適切なモニタリングツールがないことから、リスク関連情報やデータの取得が難しい状況にあります。そのため、データを用いた将来のリスク発生を予測するというフォワード・ルッキングなリスク管理が難しく、有効的かつ効率的なリスク管理手法の確立が難しいという問題があります。

そこで、今次実証実験では、声だけ5秒でモチベーションを可視化するMotivelが、オペレーショナル・リスクの管理手法の開発に向けて有用な情報が取得できるかを検証しました。

検証データは、「LIP.横浜を通じた公募」及び「当社独自の募集」によって集めた参加者から収集しました。その結果、発話計測回数は7,350件、アンケート回答数は845件のデータを収集することができました(期間:2020年8-12月)。 分析結果として、活動意欲及び集中力・注意力は、概ね、Motivelの計測結果(モチベーション指標)が低位な場合に低下することが分かりました。また、活動意欲及び集中力・注意力は、平均値対比で5pts超上昇する場合に低下リスクが小さくなることが分かりました。一方、ヒヤリハットのリスクは、モチベーション指標のボラティリティが小さく、3期連続で20ptsを下回る場合に高まることが分かりました。

背景と目的

社会活動及び企業活動における様々なリスクは、社会・企業の生産性を低下させる大きな要因となります。特に、近年は人に由来するオペレーショナル・リスク(Absenteeism, Presenteeism, 生産性低下等)の大きさが注目され、多くの企業・組織において、健康経営等を通じて積極的にリスクの削減が図られています。しかし、こうしたオペレーショナル・リスクの発生要因の一つとなるモチベーションを高頻度かつ簡易に見える化することが難しいため、データに基づいた有効性が高く、業務効率化にも貢献するリスク管理手法の開発が進まない状況にありました。 そこで、当社は、高頻度かつ簡易にモチベーションを見える化するため、「声だけ5秒でモチベーションを可視化するMotivel」のモニタリングツールとしての有効性を検証しました。Motivelのデータと、活動意欲、集中力・注意力、ヒヤリハットとの定量的な関係性を明らかにすることで、オペレーショナル・リスクの管理手法の抜本的なブレーク・スルーを目指します。

対象としたリスク

人に起因するオペレーショナル・リスクを対象としました。リスク管理の実務では、一般的なオペレーショナル・リスクの概念として、事故、ミス、不正等による直接的または間接的な損失(機会損失を含む)が該当するほか、離職、休職による直接的または間接的な損失(機会損失を含む)やパフォーマンス(仕事の生産性)が発揮されない状態も該当します。

結果

参加者

LIP.横浜を通じた募集(※2)並びに当社独自の募集により、140名が参加しました。

※2 「声だけで簡単に心の健康状態を計測」 実証実験の協力企業を募集します (https://rimtech.co.jp/index.php/2020/07/21/blog031/)

分析

データセット

実証実験期間を通じて、7350件の計測データ、845件のアンケート回答を得ることができました。データ精査の結果、分析用データセットには10-12月に収集したデータ(3642件の計測データ)を採用しました(図表1)。

[計測回数]

図表1 計測回数

多変量解析

統計処理では、基礎的な分析となる単変量解析を実施した後、リスク事象を予測するのに有効と考えられる指標を組合せて、多変量解析(ロジスティック回帰)を行いました。

活動意欲

モチベーション指標の水準との相関関係が確認できました。また、平均対比での変化(個人(i)について、平均値かららの変化)においても、相関関係が確認できました。(図表2−1,2−2)

図表2-1
図表2-2

集中力・注意力

モモチベーション指標の水準との相関関係が確認できました(図表3)。また、平均対比での変化(個人(i)について、平均値かららの変化)においても、相関関係が確認できました。(図表3−1,3−2)

図表3-1
図表3−2

ヒヤリハット

モチベーション指標のボラティリティとの相関関係が確認できました(図表4)。ただし、活動意欲や集中力・注意力に比べると相関関係が弱いため、一段の分析が必要と考えます。(図表4−1,4−2)

図表4−1
図表4−2

考察

今次実証実験の結果を踏まえると、モチベーション指標と活動意欲、集中力・注意力、ヒヤリハットの関係性を図表5のように整理することができます。

図表5

今後の対応

当社は、今次の実証実験の成果を踏まえて、モチベーションの将来を予測するMotivelの開発を加速させます。また、高頻度モニタリングに貢献するユーザーインターフェースやAPIの開発も合わせて進めます。これらMotivelのリリース時期は改めてお知らせする予定です。